2026/08/30 20:42


去年の夏、子ども(当時、小学1年生)が入院することになった。

6月から8月までの2ヶ月間、体調不良が続いていた。

何度も病院に連れて行ったけれど、原因はわからない。

そして、いよいよ症状が重くなり、入院することになった。

入院しながら検査をしてみると、腎臓が炎症を起こしていることがわかり、まずはその治療のために半月ほど入院することになった。

退院後、すぐに別の大きな病院で精密検査を受けたところ、「膀胱尿管逆流症」という病気であることがわかった。

そして、翌年の春に手術をすることが決まった。

採血や点滴、検査が続く。

そのうえ、手術までしなければならない。

7歳の子どもにとっては、大きな負担だったと思う。

とにかく注射に対する拒否反応がすごくて、

「代われるもんなら、代わってあげたい……」

と、何度思ったことか。

「あ、なんか今、親っぽいこと思ってんな〜」

なんて思ったりもした。

とはいえ、実際にわたしができることなんて、ほとんど何もない。

予防薬を続けながらも、手術までの半年間は、なんとか日常生活に戻ることができた。

そして年が明けて3月。

入院と手術の日程が近づいてきた頃だった。

学校から帰ってきた子どもが、

「小学校の校庭で、黒猫を見つけた!」

と教えてくれた。

首輪もしていたので、近所で飼われている猫なのだろう。

わたしの影響(洗脳ともいう)で猫好きになった子どもは、

「めっちゃ可愛かった!」

と嬉しそうだった。

「もうすぐ手術やから、猫ちゃんが『頑張れー』って言いに来てくれたんちゃう?」

と、冗談まじりに話していた。

そして、手術の前日。

その日はお昼から入院することになっていて、子どもと2人で病院へ向かうため、マンションのエントランスを出た。

すると、目の前に、1匹の黒猫がいた。

「にゃあ、にゃあ」

と、可愛い声で鳴いている。

人懐っこい猫らしく、ちょうどおじさんが相手をしていた。

子どもは、

「あ!あの猫!」

と、嬉しそうに駆け寄っていった。

なんと、先日学校に現れたという、あの黒猫だった。

ピンクの首輪をしている。

わたしが住んでいるマンションはペットの飼育が禁止されているので、普段から犬や猫がウロウロしているわけではない。

植木が生い茂るところで、息を潜めている野良猫を見かけることはあったけれど、この黒猫は今まで一度も見たことがなかった。

だから、少し驚いた。

もちろん、たまたまなのかもしれない。

それでも、

「手術を前に不安になっている子どもを、見守ってくれているのかな」

そんな気がして、なんだか嬉しかった。

猫を少し撫でて、勇気をもらってから、病院へ向かった。




そして、手術は無事に終わった。

その翌日。

夫から、1枚の写真が送られてきた。

そこに写っていたのは…

また、あの黒猫だった。

朝、夫が出勤しようとマンションの下を歩いていると、

「にゃあ、にゃあ」

と、あの黒猫が近づいてきたという。



その日を最後に、マンションの周りでも、小学校でも、あの黒猫を見かけることはなくなった。

日本では、黒猫は魔除けや病気平癒の存在として、「福猫」と呼ばれ、縁起のいいものとされる言い伝えもあるらしい。

あの黒猫が、なぜこのタイミングで現れたのか。
本当にただの偶然だったのか。
そんなことはわからない。

でも、あの時のわたしたちにとっては、確かに心強い存在だった。

ありがとう、黒猫ちゃん。
ちょっと不思議な、ねこのはなしでした。